望ましいタイプフェイス法的保護のあり方

平成元年9月14日内規 平成5年11月5日改訂・制定 平成8年11月8日改訂


当協会は、タイプフェイス創作者等の権利の正当性主張及び、複製行為の禁止と法的保護の確立を促進するため、昭和51年10月に協会員のための「タイプフェイスに関する倫理綱領」を制定した。しかし、タイプフェイスの用途は技術革新により、活字、写植文字盤など印刷という限られた市場から、デジタルフォントとして、WP、DTP、POP、AV、広告ディスプレイなど広範囲の業界で使われるようになり、無断コピー事件等の争いが多発するようになった。

このような急激な状況変化に対応するため、当協会は、会員のみでなく、デザイナー、フォント制作者、機器メーカー、使用者などを含めて、タイプフェイスに関与する全ての関係者に対し、下記に示す「望ましいタイプフェイス法的保護のあり方」を提唱することにした。


  1. 準拠法
    著作権法
    なお会員は、著作権法による明確な保護の確立推進のため、タイプフェイスは著作物であることを示す表示((c)マーク表記)や創作書体の実施契約等への明記に努力する。
  2.  
  3. 保護の対象
    創作されたタイプフェイス
  4.  
  5. 権利、保護の範囲
    1)複製、改変および二次的著作権の専有
    ただし、正当に入手したタイプフェイスのフォントを用いて、組版(表示・印字)、印刷などのための複製(使用)は、別段の定めのない限り容認(黙示的許諾)される。
    2)氏名表示権
    タイプフェイスの創作者はタイポグラフィック作品等の公衆への提供もしくは提示に際し、その氏名を表示する権利を有する。ただし、この権利は、本文組版等の通常印刷物等には及ばないものとする。
  6.  
  7. 権利の発生
    1)権利の発生
    個人著作:創作の時
    法人著作:公表の時
    2)既存のタイプフェイスについても新規創作と同一の扱いとする。
    (創作または公表時の遡及)
  8.  
  9. 保護の期間
    個人著作:著作者(創作者)の死後50年
    法人著作:公表後50年

◆用語定義

この綱領における用語の定義は、次に定めるものとする。


  1. タイプフェイス(書体)
    平成19年3月29日改正(理事会承認)
    言語表記を主目的に、記録や表示など組み使用を前提として、統一コンセプトに基づいて制作されたひと揃いの文字書体。通常フォント化し使用する。和文の場合、ひらがな、カタカナは清音字ゑ・ゐ・ヱ・ヰを除いた46字。漢字は教育漢字の1006字をひと揃いの最少文字数とする。また、組み使用に必要とするアルファベット、数字、記号類、シンボルやピクトグラム、オーナメントも必要に応じて、ひと揃いに加える。

    (旧定義)
    記録や表示、印刷などの文字組に使用するため、統一的なコンセプトに基づいて作成された次に示す文字または記号等の一組のデザインをいう。
    a. 日本文表記用のひらがな、カタカナ、漢字をセットとしたもの。
     通常濁音、半濁音、拗・促音、句読点、記号などの付属物を伴う。
    b. 特定の使用目的を持つ一組の仮名(ひらがな、カタカナ)。
    c. アルファベット及び記号等。
    d. 数字と定式記号、慣用されるシンボル、科学記号等の図形的記号。
    e. 縁とり、花飾り、花罫、模様のようなオーナメント。

  2. 創作者
    タイプフェイスを創作する者。 タイプフェイスの権利者
    タイプフェイス(著作物)を複製、改変、および二次的著作する権利を有する者。

  3. 複 製
    光学的、電子的その他いかなる技術的手段、または使用される材料にかかわらず、原作のタイプフェイスを構成する文字、記号などのデザインを複写(変形、アウトライン、シャドウ処理等を含む)することをいう。

  4. 改 変
    光学的、電子的その他いかなる技術的手段、または使用される材料にかかわらず、原作のタイプフェイスを構成する文字、記号等のデザインを模写、変更することをいう。

  5. 二次的著作
    光学的、電子的、その他いかなる技術的手段、または使用される材料にかかわらず、原作のタイプフェイスを構成する文字記号等に新たなデザイン処理を施して、ファミリー(ウエイト、形状、修飾)タイプフェイスや、不足文字を制作することをいう。
  6. フォント
    タイプフェイスを具体的な記録や表示、印刷などに利用できるようにしたハードウェア、ソフトウェアをいう。活字や文字盤のような形態として相似的に収容したものをアナログフォント、ドットやアウトライン等のデジタルデータに変換し、光・磁気媒体等に収容したものをデジタルフォントと呼んでいる。もともとは欧文印刷のための活字でアルファベット、数字、記号など同一タイプフェイス、同一サイズの一組をフォントと呼んでいた。
  7. 創作の時
    タイプフェイス(1組)の創作が完了した時。
  8. 公表の時
    タイプフェイス(1組)の組見本などの印刷物等を頒布、または公衆に展示した時。

 
 
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