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文化庁に「要望書」を提出
知的財産権委員会では、文化庁著作権課を1997年及び1998年の2回訪問し、著作権課長とお会いして「要望書」の提出と法的保護の促進を請願しました。その後も、数々の出来事がありましたが、特に最高裁判所が平成12年9月7日に「タイプフェイスの著作物性」についての判決を行いました。
これらの内容を検討し、今回下記の要望書を提出して請願を行いました。
特定非営利活動法人
日本タイポグラフィ協会 理事長 篠原 榮太
知的財産権委員会 委員長 布施 茂
—————要望書—————
[日本のタイプフェイス法的保護は国際的に遅れています。]
ご存知のように、欧州主要国のタイプフェイスの保護は、フランス及びイギリスは著作権法、ドイツは特別法と著作権法の重複で行われております。
アメリカは、19世紀末から活字のデザインパテントとして登録が行われ、同一デザインの活字「一組」を「FONT」と呼称していたことから、物品の意匠分類を「FONT OF TYPE」とする慣行が定着しております。また、登録公報には活字本体の形状は記載せず、「一組」の活字の字づら(face)部分の形状(デザイン)を記載し保護の対象とすることが約1世紀に亘り続いております。活字が写植文字盤・デジタルフォントと変化してもこの慣行が定着し、タイプフェイスは現在でもデザインパテントで保護されております(資料A)。
近年になって、マイクロソフト社・アップル社・アドビ社等の著名ソフトウエア企業では、デザインパテントを取得したタイプフェイスをフォント化して国内外に販売(使用許諾)する際に、その商品に「Typeface and date (c):copyright」と記載し、デジタルフォントと同様に著作権主張を行っております(資料B)。
漢字圏の香港では1997年6月にイギリス1988年法に準じた著作権法を施行し、台湾は1998年の著作権改正で著作物の例示に「字型絵画(Type face)」が明記されました。
JIS規格でも明示されているように、日本語表記には仮名に加え漢字及び欧文字が不可欠で、著作権法等で保護されているこれらの国々から大きく遅れております。このままでは、タイプフェイスデザイン創作の先進国である、日本の日本語文字表現文化は大きく衰退するのは確実です。
最高裁判所では、「タイプフェイスの著作物性」の判決を、平成12年9月7日に行いました。この内容は現著作権法を厳密に適用し、理論上、『顕著な特徴を有する独創性と美術鑑賞の対象となり得る美的特性を備えた』タイプフェイスのみが著作権で保護されるとの判示でした。これは、タイプフェイスが公的機関を含め知的財産として取引されている現在までの契約商慣行(※1)とは大きく乖離しています。
そして、他の著作物に比して極めて厳しい条件をタイプフェイスに求めた理由を、『小説論文等の印刷出版に際し、氏名表示/著作権者の許諾が必要となる』としています。著作権を認めたタイプフェイスにも小説論文等の印刷出版の際に、その都度氏名表示/著作権者の許諾を求めていては、タイプフェイス本来の目的が実施できず、大きな矛盾を生じます。本来の目的である組版印刷に際し、氏名表示や複製許諾は100余年前の活字の時代から存在していません。
最高裁が理由とした氏名表示/著作権者の許諾は、「一組」の複製物であるフォント等の範囲とし、『正当に入手した「一組」の中から文字を選び文章を作る組版以降の複製(組版/印刷/表示)は侵害行為にならない』ことを、プログラムを著作物とした時のバックアップ複製(法47条の二)と同様に「著作権法」に明記する改正をして頂ければ、上記の乖離や矛盾が解決(※2)いたします。また、この明記/改正要望事項は、ウィーン協定やイギリス/香港の著作権法に記載されている事項でもあります。法的保護の国際的ハーモナイゼーションは国際摩擦を防止し、感性豊かなタイプフェイスの創作を促進して、印刷・広告・看板・テレビ・パソコン・Webと拡大・進化している日本語文字表現文化の発展に大きく寄与します。
何卒、上記事項をお汲み取り頂き、著作権法の改正《研究・答申》を要望いたします。