私が最も好きな町の一つに、スイスのベルンがある。クマが、名前の由来となった町である。最初に訪れたのは、1965年。二回目は、伊藤勝一さんと、1970年だった。スイスの首都であり、アルプスの雪山が見えるすがすがしい町である。町を取り囲むアーレ川のほとりで、気持ちよく昼寝をしたことが懐かしい。ここには、ヨーロッパで最も長い、6キロにも及ぶアーケードがある。1191年からの時計台の基部は、町の最古の建造物である。この時計には、小熊の行進の仕掛け人形もあり、時報を告げる。16世紀に、戦利品と一緒に連れてこられたクマがきっかけで飼われるようになった熊公園のクマが、今でも人気者である。ベルンの美しい町並みは世界遺産となり、世界に注目されている。屋根が、古い赤瓦で覆われた、古くも美しい町。私が行った頃は、瓦が所々傷んでいたのを思い出す。
旅行好きの若者だった私は、ベルンに行く前に、北海道の登別のクマ牧場を訪ねたことがあった。100匹を超えるクマがいた。その時、一人で雄阿寒岳に登った。道中まったくひとけがなかった。11月で、クマに遭遇する恐れがあったので、クマよけに大声で歌って歩いたものだった。
本州にいる、ツキノワグマは、体長110~150センチ、体重80~120キロ、鋭いツメを使って、木に登ったり穴を掘ったりする。時速40キロ以上で走ることができる。行動範囲は、10~100平方キロメートルと広い。クマは、ヒグマ、ツキノワグマを合わせて、どれぐらい日本にいるのだろう。正確な数は不明で、推定生息数は最低約1万6千頭~最大約2万6千頭とかなり幅がある。多い所は、長野1900~3700、北海道1800~3600、岩手1343~2097、岐阜1228~1430、新潟1052~1268、など。生息数の調査は、猟師の経験を生かした、目視調査が主流だったが、絶滅を恐れ、実際よりも少なく見積もってきた。またクマは、夜行性で、調査が難しいとも言われている。最近は、より科学的な調査が、専門家によって取り組まれているそうだ。
絵本では、クマは愛され人気者である。愛嬌があり、そのかわいいキャラは、多くのシンボルにも採用されている。しかし、本物は大変恐ろしく、一年間に何人もの死傷者が出る。ある朝、新聞に二頭のヒグマが、町を歩いている写真が出ていてビックリした。すぐ近くを車が走っていた。その後、射殺されたらしい。クマにとっては自分たちの環境に人が入り込んできて、食糧確保が困難になってきている。今年度に、全国で捕殺されたクマが約3千頭。何だか、かわいそうに思った。
日本では、肉食獣の中で最大、腕の力は強力で、馬でさえ襲われることがある。クマとの出会いを防ぐため、長野県軽井沢町は、クマの行動の監視を委託している。わなにかかったクマに、発信器を付けている。人家に近づいたクマは、犬を使って山奥に追いやるようにしている。
聖書には、恐ろしいクマが出現する。ダニエル書の中には、地上の世界強国の出現を予告したくだりがあり、そうした国々を象徴するために獣が登場する。そこに登場するクマは、メディア・ペルシャ世界強国とその領土征服や奪略に対する貪欲さを表すために用いられる。(ダニエル書7章)
熊のシンボルは、他に、ドイツのベルリンなどにもある。